上塗りは塗りの最終工程。
漆器の制作は分業制で、木地師が作った木の器や皿などの木地に錆漆を塗っては研ぎをして漆器を保護するのが下地の仕事です。
漆は乾くという言い方をしますが、本来は硬化と言われます。漆は空気中の水分とウルシオールという酵素が結び付いて硬化します。
漆室(ウルシムロ)という湿度と温度を保つ保管庫に入れて硬化させます。
漆は温度が24℃~28℃、湿度が70~85%が適切だと言われており、上塗ではその環境を整えるのにコントローラーで調整する方もいます。
漆塗りが完成するまでには、実に多くの工程があります。
今回は漆塗りの最後の工程、塗りの作業を紹介します。
上塗りと叢雲塗
上塗りは空気中のほこりのとの闘いです。漆刷毛、漆の中の塵、部屋の空気中のほこり、衣服のほこりを落としてから塗ります。
基本的には上塗り部屋には一人で塗っている人もいます。
上塗りはほこりの付着は許されません。漆が固まってからもぷちっと表面に出てきてしまうので、ムラなく綺麗に塗るのはもちろん、無駄なくスピーディーに塗ることも必要です。
繊細で集中力が必要な仕事です。
塗った後でもわずかに塵やほこりが付くことがあります。上の写真は節上げといい、塵やほこりを取り除く作業です。塗も素早く、節上げも素早くしないと空気中の塵やほこりが塗面に付着してしまいます。
昭和初期の変わり塗の資料。50種類もの変わり塗がある。
叢雲塗の難しいところは何と言っても狙った模様が作りにくいところです。炎がゆらぎ、炎までもコントロールできないから難しいところでもあり面白いところでもあるそうです。
清水さんは昔の資料から調べて自分で研究されたそうです。
山中は戦後、漆が手に入らず、漆の代用であるカシュー漆で叢雲塗をしていましたそうです。昔、変わり塗は蒔絵師の仕事で山中でも多くの職人が叢雲塗をしていました。清水さんは諸先輩方から叢雲塗を教わり今もその技術を受け継いでいます。
昔の職人の技術や変わり塗などの探求心は素晴らしく、昔からある技術が続いていることは素晴らしいと思い、今後もその技術を繋いでいかないといけないと感じました。
刷毛塗りのいいところ
- 刷毛塗りのいいところは手に触れたときのしっとりとした心地よい質感、
漆ならではの艶感、口当たりも柔らかく心までもリラックスできるような豊かさがあると思います。また、漆器を小さなお子様に与えると落ち着く効果があると言われています。
- 刷毛塗りの漆器は使い込むごとに艶が出てきます。漆は水分が大好きで乾燥よりも潤いが大切で、使ったあとに拭き取り、磨かれることで表面が平らになることで艶が出てくるのです。漆器は飾って楽しむのもいいですが、是非使って器を育て上げてほしいです。
漆器は塗り直しができます。剥がれた部分や欠けた部分があってもその部分を下地で繕い直すことができます