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山中漆器 下地師の仕事

下地は木地を保護し、中塗、上塗の出来を左右する大切な工程です。塗っては研ぎ、塗っては研ぎの繰り返しで丈夫な漆器ができます。 

塗ってしまうと見えない部分ですが、見えない部分に手を加えることで丈夫な漆器ができるのです。 

下地の工程は 

木地固め→布着せ→布研ぎ→一辺地付け→研ぎ→二辺地付け→研ぎ→三辺地付け→研ぎ→錆地付け→錆研ぎ 

以上の錆研ぎまでの工程になります。 

錆(さび)を付ける田中氏 

なぜ下地をするのか? 

 必ず下地をしないといけないということはありません。現に山中では木地の木目を生かし、漆を塗って拭き取る拭漆で仕上げた塗りが多く、山中漆器の代表とする塗り方でもあります。ただ、下地をしない器は木が水分を含みやすく、乾燥にも弱いので使い込んでいくとひびが入る場合があります。 

そこでどうするか? 

木に水分を含ませないように漆の原液である【生漆(きうるし)】に地の粉、米糊、砥の粉を混ぜた【錆(さび)】で木を保護し肉付けをします。1回目の錆付けは粒度の荒い錆をヘラで付け、砥石で研ぎ、2回目は1回目よりも細かい錆でつけ、砥石で研ぎという工程を繰り返すことでだんだん漆の層が増し、かつ平滑な丈夫な下地が完成します。 

砥石を使った錆研ぎ 

下地師の田中さんは、「下地はいわば筋トレをしているようなもの。劣化を防ぐために下地をすることで筋肉を鍛えることになる。僕らはそういう仕事をしています。」とおっしゃっていました。 

下地は見えなくなってしまうから手を抜いていいわけではなく、この仕事の良し悪しが、中塗り、上塗りの工程を支え、利用する皆様に1日でも長く使って頂くために大事な仕事です。 

この大事な作業をする下地師が少なくなっているのが山中の現状です。拭漆は、もちろん山中漆器の魅力の一つでありますが、縁の下の力持ちの下地の仕事を見ていただきたいと思いますし、今後下地のテクスチャーを生かしたモノづくりも行っていきたいと思っています。 

地の粉(じのこ)・・・藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積物を蒸し焼きにし粉末にしたもの。地の粉はガラス質でできていて非常に堅く、また微細な孔が数多く空いているのでそこに漆が入り込み、極めて堅牢で断熱性にも優れた下地になる。 

砥の粉(とのこ)・・・粘板岩の風化作用により生成される超微細な粒子状の粉。表面を磨き上げる際にも使われる。生産地は京都山科にある工場2件のみ。 

生漆(きうるし)・・・漆の木の幹に傷をつけ、そこから出てくる乳白色の樹液(荒身漆)から木の皮などをろ過したもの。 

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